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佐賀地方裁判所唐津支部 昭和59年(ワ)28号 判決 1986年7月10日

原告 福田浩

右訴訟代理人弁護士 河西龍太郎

同 本多俊之

被告 毛利運送株式会社

右代表者代表取締役 毛利和美

<ほか一名>

被告ら訴訟代理人弁護士 森竹彦

主文

一  被告らは各自原告に対し金二八〇万八六〇〇円及びこれに対する昭和五九年六月一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用はこれを八分し、その七を原告の、その余を被告らの各負担とする。

三  原告その余の請求を棄却する。

四  この判決は主文第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一申立

一  原告

1  被告らは各自原告に対し金二〇二九万円及びこれに対する昭和五九年六月一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言。

二  被告ら

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二主張

一  請求原因

1  事故の発生

(一) 日時 昭和五七年七月七日(午前二時頃)

(二) 場所 福岡市早良区室見四丁目二四番レストラン「フォルクス」前国道

(三) 加害車 中型トラック(四トン車)

右運転者 被告芭蕉

(四) 被害車 普通乗用車(タクシー)

右運転者 原告

(五) 態様 原告が赤信号で停車中に、被告芭蕉運転の加害車が追突し、原告は後記傷害を負った。

2  責任原因

被告毛利運送株式会社(以下被告会社という)は、加害車の運行供用者であり、自賠法三条により、被告芭蕉は前方不注視により本件追突事故を発生させた加害者であり、民法七〇九条により、それぞれ損害賠償責任を負う。

3  受傷・治療経過等

(一) 受傷

原告は、本件事故により頸椎捻挫、腰部打撲傷等の傷害を負った。

(二) 治療経過

原告は、右受傷により、川添整形外科医院に昭和五七年七月九日から同年一一月一二日まで(一二七日間)入院し、同年七月八日及び同年一一月一三日から同月二二日まで(実通院日数八日)通院し、河野整形外科医院に同年一一月二四日から同五八年一一月五日まで(実通院日数二七二日)通院し、魚住医院に同年一〇月一四日から通院し治療を受け同五九年五月三一日症状固定と診断された。

(三) 後遺症

原告は、現在、腰椎間ヘルニヤ、頸椎の椎間孔狭少、第六頸椎の変形が認められ、自覚症状として頑固な頭痛、頸痛、左手しびれ、筋力低下、腰痛等が認められ、昭和五九年一二月二〇日、変形性腰椎症等による体幹の機能の著しい障害により身体障害者等級表五級の認定を受けている。

原告の右後遺症は自賠法施行令第一条に基く後遺障害等級表第九級一〇号に該当する。

4  損害

(一) 入院雑費 一〇万一六〇〇円

(一日八〇〇円、一二七日)

(二) 入通院交通費 一一万円

(入院一二七日間、通院一八ヶ月)

(三) 入通院慰藉料 一五〇万円

(入院一二七日、通院一八ヶ月)

(四) 休業補償費 二〇四万円

原告は、タクシー運転手として事故前三ヶ月間に六一万三四七四円の収入を得ていたから算定基準年収三〇六万七三八〇円(三ヶ月の収入÷三×一五)のところ、昭和五八年一〇月から同五九年五月末日まで休業した。

(五) 後遺症による逸失利益 一二九六万円

原告の後遺症は自賠責後遺障害等級表九級一〇号に該当するから、算定基準年収を三〇六万七三八〇円とし、就労可能年数一七年として新ホフマン式計算をする。

(六) 後遺症による慰藉料 五〇〇万円

原告の本件事故による後遺症の内容、程度に照らして、後遺症による精神的苦痛に対する慰藉料は五〇〇万円を下らない。

以上のとおり原告の被った全損害は二一七一万円(一〇〇〇円以下切捨)となる。

5  損益相殺

原告は被告らより休業損害三二一万二二六〇円、雑費二万一〇〇〇円を受領した。原告はこれらを損害金から控除する。

したがって実損は一八四七万円(一〇〇〇円以下切捨)となる。

6  弁護士費用 一八〇万円

原告は被告らが損害金を任意に支払わないため原告訴訟代理人らに本件訴訟を委任せざるをえなかった。

この費用としては一八〇万円が相当である。

7  よって、原告は被告らに対し金二〇二七万円及びこれに対する後遺症確定日の翌日たる昭和五九年六月一日から完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実は認める。

3  同3の事実中、(一)は認める、同(二)のうち魚住医院通院の事実及び症状固定の日時は不知、その余は認める、同(三)は争う。

4  同4の事実中、被告らが計三二三万三二六〇円を支払ったことは認め、その余は争う。

5  同5の事実は不知。

三  被告の主張

1  原告が本件事故で受けた傷害は、脊椎骨自体や軟骨組織に異常をもたらすほどの重篤なものではなく、その傷害の程度は、脊椎骨周囲の軟部組織の傷害であった。原告が事故後山下病院、川添整形外科、河野整形外科においてレントゲン検査を受けて、いずれも異常なしと判断されていることはその証左である。この診断は、外科・整形外科の複数の専門医の判断として十分の信頼がおけるものである。かような頸部(頸椎)捻挫、腰部(腰椎)捻挫と呼ばれる軟部組織の損傷の場合、その回復治癒に要する期間は永くても数週間をもって足りるといわれている。

2  原告は、事故日に山下病院において治療を受けたあと、川添整形外科に約四ヶ月入院して治療を受け、症状が軽快して退院し、その後一〇日通院してから河野整形外科に転医し、通院治療を受けているが、その内容は保存的対症療法であってめぼしい治療効果はあがっていない。そうすると、原告の症状は川添整形外科を退院したとき、それより譲ったとしても同院の通院治療を終ったときには症状固定の状態にあったといわねばならない。

3  原告に後遺症を残したとしても、その症状は主観的な訴えである疼痛を主としていて、客観所見に乏しいものである(河野医師の昭和五八年三月三一日付診断書によると神経学上、レ線上著変は認められないとある)から、自賠法施行令別表の後遺障害等級表の一四級一〇号に該当するにすぎない。

4  しかし、自賠責保険調査事務所は、原告の症状が別表第一二級に該当するものと認定し、原告は、昭和五九年七月四日本件の後遺障害に対する損害賠償額として二〇九万円を受取っている。

5  原告が身体障害者五級に認定されたのは、変形性腰椎症等によるようであるが、変形性腰椎症(椎間板変性を含む)は加令による経年的変化によるとされており、原告の症状について河野医師は昭和五八年五月当時までの年令的因子を否定しており、唐津赤十字病院、九大医学部整形外科も、変形性頸椎症、腰椎椎間板変形の診断のもとに事故との因果関係については判定できないとしている。

したがって、原告について本件事故と因果関係が肯定できる客観的異常所見は認めることができない。

四  被告の主張に対して

1  原告は本件事故発生以前は全く腰痛症状を経験したことがなかった。原告は本件事故により、プロパンガスを満載し、時速六〇キロで進行してきた四トントラックにノーブレーキで追突されたものであり腰部に相当強度の圧力を受けている。

2  原告は、本件事故直後、主要には腰部の痛みを訴えており、河野整形外科の診断も外傷性腰部症候群を最初の傷病名にあげている。同病院では骨盤の牽引、超短波等の腰部に対する治療が続いている。

3  松元医師は、河野整形外科で撮影した原告の腰部のレントゲン写真に狭少のあることを認めた。このことは既に原告に変形性腰椎症が存在していたことの証左であり、河野医師の腰部レントゲン写真に異常なしとする判断は誤りである。

4  唐津赤十字病院の近間医師は、外傷に起因するものか否か不明としながらも、原告に、昭和五八年一一月一二日当時、左上肢知覚低下、頸部痛、頸椎可動域障害、右下肢知覚障害、腰痛、右ラセーグ症状陽性、腰椎可動域障害の存在を認めた。さらに、昭和五九年三月九日の段階で、九大病院の松元医師も原告の頸部及び腰部の疼痛につき治療の必要性を認めている。

5  原告の症状固定の時期は、昭和五九年五月三一日である。現在の主治医魚住医師は、自覚症状として頑固な頭痛、頸痛、左手しびれ、筋力低下、腰痛等を認め、他覚症状として頸椎、腰椎のレントゲン異常を認めた。

原告は現在も腰痛を訴えているが、以上のとおり本件事故と原告の腰痛には相当因果関係がある。

第三証拠関係《省略》

理由

一  請求原因1(事故の発生)、同2(責任原因)の事実は当事者間に争いがない。

二  請求原因3のうち、(一)(受傷)は当事者間に争いがなく、(二)(治療経過)のうち、魚住医院の事実を除くその余の事実は当事者間に争いがない。

三  原告の負傷及び後遺症の内容・程度

原告は、本件事故によって多岐にわたる傷害及び後遺症を負った旨主張し、被告はその存在ないし因果関係を強く争うので、原告の負傷及び後遺症の内容程度について判断する。

《証拠省略》を総合すると、次の事実が認められる。

1  原告は、昭和九年三月三一日生れで、本件事故当時四八歳であった。原告は、事故当日、現場近くの山下病院で腰部挫傷、頸部捻挫加療五日を要すとの診断を受け、レントゲン検査の結果は異常なしとされた。

なお、原告運転のタクシー乗客松森緑(当時二四歳)は、頸椎捻挫加療二週間を要すと診断されたが、結局昭和五八年一月一七日症状固定と診断され、同年二月八日示談が成立している。

2  原告は、事故翌日の昭和五七年七月八日、川添整形外科の診察を受けた。川添医師は医学的諸検査のうえ(レントゲンは山下病院で異常なしとのことで重複を避けて撮影せず)外傷性頸部、腰部捻挫、左膝側副靱帯挫傷と診断した。

原告は、同月九日から同年一一月一二日まで入院して治療を受けたが、治療内容は腰椎、頸椎(一〇月一九日まで)の牽引、投薬が主であった。腰脊部痛が残存したので同年八月二四日レントゲン写真を撮ったが異常所見は認められなかった。

3  原告は、川添整形外科の治療では症状が格別軽快しなかったとして、同年一一月二四日、河野整形外科に転医したが、その初診時の主訴は、雨の日に左膝が痛い、運転すると腰が痛いというものであって、頭や項の痛みは訴えなかった。河野医師は、腰椎と左膝のレントゲン写真を撮り、その他医学上の諸検査をしたうえ外傷性腰部症候群、左大腿膝打撲と診断したが、レントゲン検査に異常は認められず、アキレス腱反射の低下、左膝運動制限等が認められるものの大した症状ではないと判定し、骨盤牽引、投薬等の保存的療法を施した。

原告は、同年一二月二一日になって項部痛、頭痛を訴え、同五八年一月一〇日には両上腕内側の痛みを訴えた。

そこで河野医師は頸椎のレントゲン写真を撮ったほか医学的諸検査をしたが格別有意義な異常は認められなかったので外傷性頸部症候群と診断した。頸椎の椎間孔の狭少、神経根の損傷の有無を検査するジャクソン、スパーリングテストもマイナスであった。

4  河野医師は、昭和五八年五月二八日、原告の頸部、腰部のレントゲン写真を撮ったところ、第六頸椎に骨棘を認めたが、加齢的変化であって、四八才の年令に照らして異常とはいえないと判定し、第五腰椎と仙椎との間はやや狭いが顕著な狭少ではなく正常の範躊に属すると判定(この点は松元医師と異なる)した。

河野医師は、原告の諸愁訴と医学上の諸検査の結果が一致しないこと、治療効果が殆どあがらないこと、年令的因子は否定できることから、原告の症状は心因が大であると判断して、昭和五八年七月末で症状固定として治療を打切ることにしていた(当裁判所はこの日で症状固定と認める)が、打切りを示唆すると原告が症状の増悪を訴えるために治療を継続したようである。

5  原告は、河野整形外科の治療では症状が格別軽快しなかったとして、昭和五八年一〇月一四日、福岡市の魚住医院に転医した。魚住医師は原告の愁訴を聞きレントゲン検査と握力検査をしたうえで頸椎捻挫、腰部打撲症と診断した。同医師は、第六頸椎の変形、椎間孔の狭少、第五腰椎、仙椎の椎間板ヘルニアがレントゲン検査で認められるから、これは大きな外圧がかかったことを意味するから、本件事故に基因するものと認めて差し支えないと判定(この点松元医師は、一回の事故や外傷でかかる変化を来すことは経験していないと述べてこれと異なる)したもののようである。

6  原告は、昭和五八年一一月一二日、唐津赤十字病院の診断を受け、医学的諸検査のうえ、変形性頸椎症、腰椎椎間板変性、右坐骨神経痛と診断され、レントゲン検査上、頸椎、腰椎の変化は認めるが、外傷に基因するものか否かは断定できないとされた。

7  原告は、昭和五九年三月九日、九大病院で診察を受け、医学的諸検査のうえ、頸部痛、腰痛症(第五腰椎、仙椎間椎間板変性)と診断されたが、本件事故との直接的因果関係については判定できないとされた。右診察に当った松元医師は、原告の症状について、痛みがあるというのが主な所見で他覚的にはっきりしたものはあまりないという状態であった。レントゲン写真では第六頸椎と第七頸椎の間に軽い骨棘形成があるが年令的なものと考えるべきで、一発の事故でなるとは考えにくい、椎間孔はとりたてて狭くなってはいない、第六、七、八頸椎の間もとりたてて狭くなってはおらず軽度の加令的変化であって異常という程のものではない、第五腰椎と仙骨の間は、ほかからくらべるとちょっと狭いと見てよいが、一回の外傷で狭くなったことは考えにくいという。

8  原告は、魚住医院でレントゲン照射治療と称する治療のほか、消炎鎮痛剤の投与を受けたが、その症状は格別軽快せず、昭和五九年五月三一日、結局頑固な頭痛、頸痛、左手のしびれ、筋肉低下、腰痛の後遺症が残ったとして症状固定の診断を受けた。

9  いわゆるむちうち損傷(軟部組織の損傷にとどまるもの)のうち、約三割が難治化するが、その最大の要因は心因であるといわれ、受傷直後の治療は安静、固定が基本であり、冷湿布、鎮痛・消炎剤の投与で回復を待つ(通常は約三週間で足りる)のが最良の方法であり、患者の多彩な愁訴に幻惑され、いたずらに症状を追って牽引・マッサージ、温熱などを次々と試みるのはとるべき態度でなく、牽引は有害であるので行ってはならないとされる。また、レントゲン写真の所見上みられる異常所見と臨床症状との因果関係は必ずしも相関するものではないといわれており、医学上なお未解明の点が多い現状である。

以上のとおり認められ、右認定を覆すに足りる明確な証拠はない。

右事実によると、原告が本件事故で受けた傷害は、脊椎骨や軟骨組織に異常をもたらすほどの重篤なものではなく、脊椎骨周囲の軟部組織の傷害にとどまる、いわゆるむちうち損傷であり、その治療期間は約三週間をもって足りるものとされ、受傷後三週間を過ぎ慢性期に入ったころに依然症状を訴える者には心因性の要因が関与されるといわれているところ、原告の症状は受傷後三週間を経て依然として軽快せず、医学上の諸検査にも格別有意義な異常は発見されず、検査結果と原告の愁訴が一致しないところに照らすとその症状には心因性のものが多く関与しているのではないかとの疑いが強く残るところではあるが、原告は前記認定のとおり受傷直後の安静固定期に、有害で行ってはならないとされる牽引を連日受けていること、昭和五八年一一月の唐津赤十字病院、同五九年三月の九大病院での検査においてはレントゲン像に頸椎、腰椎の変化が認められること(もっとも、この変化が外傷に基因するものか否かは判断しえないとされる)、いわゆるむちうち症については医学上なお未解明の点が多い現状であることに照らすと、原告の右症状について医学上の鑑定を経ていない本件において、因果関係についての不透明部分を全部被害者である原告に帰せしめることは衡平に反する。

ところで、自賠責保険事務所は原告の症状が自賠法施行令別表の後遺障害等級表一二級一二号相当の後遺症と認定しており(この点は被告らの自認するところである)、この点は被告らの争うところではあるが、右に検討した結果その他本件に顕われた一切の事情を斟酌すると、本件損害賠償請求においては、原告は本件事故により頸椎、腰椎捻挫等の傷害を負い、前記入通院の結果昭和五八年七月三一日症状固定し、自賠責保険事務所査定どおりの後遺症が残ったものと認めるのが相当であると判断する。

四  損害額

如上の事実関係(特に本件事故について原告は一方的な被害者であり、被告芭蕉の過失は大きいというべきであること、原告の主張する負傷、後遺症の内容程度には少なからず不透明な部分が存すること)のもとにおいて、原告が本件事故によって被ったと認められる損害額を以下のとおり算定する。

1  入院雑費 一〇万一六〇〇円

入院期間及び経験則に照らして主張どおりの雑費を要したことが認められる。

2  入通院交通費 なし

原告が症状固定日までの入通院交通費を要したことは明白であるが、その数額を認めるに足りる立証はない。

この点は慰藉料算定において斟酌する。

3  休業損害 なし

前認定の症状固定日までの休業損害は全額原告において受領済みであることは原告の自認するところであり、原告主張の休業期間は症状固定日以後のものであって採用の限りでない。

4  後遺症による逸失利益 一二一万八〇〇〇円

原告は前記のとおり自賠法別表一二級一二号相当の後遺症を残し、症状固定後四年間平均一四パーセント労働能力を喪失し、その分の得べかりし利益を逸失したものと認めるのが相当である。右損害額を原告の事故前三ヶ月の平均収入を基礎として計算すると、左のとおり一二一万八〇〇〇円(百円以下切捨)となる。労働能力喪失の程度がより大きいとの原告の主張は採用の限りでない。(六一万三四七四円×四×〇・一四×三・五四六(四年のホフマン係数)≒一二一万八二一二円)

5  慰藉料 三三〇万円

前記認定の本件事故の態様、傷害の部位、程度、治療経過、後遺症の内容、程度その他本件に顕われた諸般の事情を総合して三三〇万円の慰藉料をもって相当と認める。

6  弁護士費用 三〇万円

本件事件の難易、審理の経過その他諸般の事情に鑑みると被告に対し賠償を求め得る弁護士費用は三〇万円が相当である。

五  損害の填補

原告が本件事故による損害の填補として、昭和五七年七月八日から同五八年九月分までの休業補償三二一万二二六〇円及び雑費二万一〇〇〇円を受領していることは当事者間に争いがなく、《証拠省略》によれば、自賠責保険金二〇九万円の支払を受けていることが認められる。右休業補償は原告において予め控除しているから、損害賠償から控除すべきものではない。したがって本件損害賠償請求において損害額から控除されるべき損益相殺の額は二一一万一〇〇〇円となる。

六  結論

以上により明らかなとおり、原告の本訴請求は、被告らに対し各自金二八〇万八六〇〇円及びこれに対する本件事故の後の日たる昭和五九年六月一日から完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその限度で正当として認容し、その余は理由がないから失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条、仮執行宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 渡邊雅文)

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